INTERVIEW
強みは技術開発力
創立100周年を迎えた。
先人達が幾多の苦難を乗り越えて築き上げてきたことにより、100周年の節目を迎えることができた。100年という歴史の重みを全社員がともに感じながら、次の150年、200年へと会社を継続的に発展させていかなければならないと考えている。大きな節目ではあるものの、一つの通過点として全社員が一丸となって立ち向かっていくことが必要だ。
2023年5月には、その第一歩の指標としての「中期経営5カ年計画」を策定している。
中期経営5カ年計画の概要は。
中計は2023年4月~2028年3月を計画期間とするもので、外部コンサルタントを招いて課題を抽出し、持続的な発展に向けて基本方針や事業戦略、数値目標を設定した。
基本方針として①お客様のニーズに応える体制の構築②設備投資による事業拡大③人材の育成とキャリアプランの整備を挙げており、2028年3月期に売上高80億円、経常利益8億円、将来的には売上高100億円を目指すと目標を掲げている。当社の強みを生かしつつ、時代やニーズに応えた新たな取り組みを行い、目標達成を果たしたい。
改めて、旭コンクリート工業の強みとは。
当社の強みはやはり技術力、技術開発力だと考えている。当社はこれまでボックスカルバートを主体として技術開発を行ってきた。プレキャストボックスカルバートにプレストレスト技術を活用したPCボックスカルバートは当社が開発した製品であり、1966年に大阪国際空港(伊丹空港)の滑走路内を横断する雨水排水路に初採用されて以降、全国で採用されてきた。1974年にはPCボックスカルバートの技術信託を行うABCグループを発足させ、その後、1981年にはABCグループを発展的に解消し、日本PCボックスカルバート製品協会を設立し、会員各社とともに普及に取り組んでいる。その後も、社会資本整備に貢献する新たな技術を開発し、TB(タッチボンド)工法研究会や全国コネクトホール工業会など6団体を設立して技術信託を行っている。これらの技術は特許を取得するとともに、国土交通省の新技術活用システム「NETIS」への登録や、各審査機関による建設技術審査証明の取得も行っており、技術開発力を通して防災・減災、国土強靭化とともに業界の発展にも寄与してきたと自負している。
そのほかにも当社の強みとしては、「信用第一」という社是を掲げて事業を展開してきたことによる顧客との信頼関係の積み重ねや、安定した財務基盤なども挙げられる。
生産力・販売力を増強
100年かけて積み重ねた強みを生かすためには。
一つには技術信託を行っている各団体の結束力強化が挙げられる。技術信託のために作られた団体ではあるものの、発足から年月が経って技術的な成熟も進んだことから技術的な取り組みや連携が少なくなってきつつある。日本PCボックスカルバート製品協会では9月1日に技術委員会を開催して新技術の紹介や設計・開発業務に関する諸課題などについて検討を行った。こうした技術面から結束力を高める取り組みを各団体で進めていきたい。 また、独自で製品開発を行うことも大事だが、ゼネコンなどの異業種と連携して顧客ニーズに応える技術開発も重要だ。顧客ニーズの調査にも継続的に力を入れていきたい。
技術力を生かすために社内で取り組む課題は。
工場の老朽化などにより生産効率が落ちてきているため、生産力の強化を図っていきたい。新たな設備を導入することは省力化や作業環境の改善につながり、生産力の増強だけでなく人材確保の面で良い影響がある。積極的な設備投資を行う方針だ。
生産力を増強することと合わせて販売力も強化したいと考えている。数年前から女性総合職の採用にも取り組んでおり、採用・定着につながるよう努めていきたい。
人事制度含め改革を
社内体制の改革も検討している。
社会資本整備に携わるコンクリート製品業界はIT業界などと比べて派手ではなく、給与水準も高いとは言えないし、業界として先行きが見えないと感じていた。そのため、私が社長に就任したとき「全社員が希望を持てる会社を築くこと」を掲げ▽意識改革▽利益の確保▽チームワークの3つをキーワードに取り組みを進めている。
当社は100年の伝統を有している半面、体質が古いところもあると感じている。時代に合わせて変化していく必要がある。人事制度を含めた各種の改革を実現するためにも風通しの良い会社になるように取り組んでいきたい。
当社は安定した財務基盤を有していることから、投資を積極的に行うことができる。設備だけでなく人にも有意義に投資していきたい。
中計に具体的に記載はしていないが、中計の最終年度である2028年3月期には社員の年収を2割アップできればと考えている。同時に、株主還元にも注力したい。そのためには地道に、そして確実に稼いでいける会社にしていかなくてはいけない。
今後の展望を。
中計の数値目標である売上高80億円を達成するためには現在の製品や市場で拡販に取り組むだけでは難しい。ニーズがあり需要が見込める新たな分野でのプレキャスト製品を開発・製造に取り組みたいと考えている。
将来的に売上高100億円を実現するためには、さらに取り組みが必要だ。機会があれば関連分野でのM&Aも検討したい。
脱炭素社会に向けたCO2排出量削減など社会的な要請による新たな課題にも対応していく必要がある。今後も技術力という強みを生かして旭コンクリート工業のブランドを維持し、価値を高めながら従業員の雇用と経営の独立を守り、次の100年に向かっていきたいと考えている。